オススメ度 60/100(2022/1/7読了) 伝記作家のジェフベゾス評,ジェフゼゾスから株主からの手紙,ジェフゼゾスの講演を文字に起こしたものの三部構成となっている.序章のジェフゼゾス評がとても上手くまとまっているので,第一部以降が繰り返しに感じられ少し間延びした印象となった.ただ総じて,ジェフゼゾスがどのような思いで事業を行っているのかが伝わってきて熱くなれる本であった.
序章は伝記作家であるウォルターアイザックソンが,現在生きている人間の中で,伝記の主人公と肩を並べる偉人は誰かという問いに答えるところから始まる.
その問いに対する答えが今回の本の主人公であるジェフ・ベゾスである.
偉人たちの共通点は創造性とひらめきであるとアイザックソンは言う.
この創造性とひらめきはどこから来るのであろうか.第一に世界に対して好奇心を抱き続け,驚きを持つ事.第二に芸術と科学を融合させることであるとしている.見事にベゾスはその特徴を満たしていた訳だ.その後はベゾスの幼少期からアマゾンを立ち上げ,そして大きくしていく話がまとめてある.本を読むのが苦手な人はここを読めば,ベゾスのエッセンシャルな部分がある程度理解できるであろう.
短い序章を終えた後,本編へ入っていく.本編はジェフベソスが毎年amazonの株主へ宛てた手紙を集めたものとなっている(1997年-2019年分).
その中で繰り返し述べられていることが
・ビジョンは長期的に考える事
・長期的なキャッシュフローをなによりも大事にしている.
・競合に勝つ事ではなく,何よりも顧客の利益を徹底する事.結局それが株主の利益になること.
・優れた業務運営を行うこと.
・失敗を厭わないこと.
・多くの失敗は一つの大勝ちで取り戻せる.
・後戻りのできる判断に時間をかけない.後戻りの出来ないことには徹底的に考え抜く.
・day1(全ての日が始まりの日であること)を大事にしている.
あたりであろうか.具体的な内容は本を参照されたい.
そして本は第二章に入る.ここに関しては序章の元となっている各地でのジェフベソスの演説が列挙されている.第一章では起業家としてのジェフベソスの考え方が垣間見えたのに対して,第二章ではその生い立ちや個人的なジェフベソスの考え方が垣間見える.
<響いた言葉(一部意訳)>
・後悔最小化の法則
・「私の孫には,私の孫よりも一人当たりのエネルギーをもっと多く使うようになっていてほしい.」「〜そしてそこに1000人のモーツァルトと1000人のアインシュタインが存在して欲しい」
・来店頻度が増えれば,お客様に戻って来ていただくための時間と労力とマーケティングへの費用が減ります.いつも目に入るものは忘れません(1999年の手紙).
・究極の財務指標は一株あたりのキャッシュフローである.
・紙の本よりも良いものを作る.500年もの間あり続けたものよりも良いものを作る.紙の本の一番大切な部分を踏襲しながら,紙の本の完全な模倣をすることはしない.
・人間はツールと共に進化する.
・お客様のニーズを起点に考える.これは現在自分が出来るスキルで何かできることを探すのとは反対の考え方である.
・ムダはチャンス.(優れた業務運営を行うことと繋がる)
・年間目標を立てるのは秋に始まり,終わるのはクリスマスが終わったころと大変長い.
・お客様に愛される,巨大な規模に拡大できる,資本対リターンが大きい,長期にそれが期待できる,そのような事業を思い付いたら即結婚!!!(eコマースだけでなくクラウドの事業の規模の考え方にびっくりした)
・野球ではどれだけ大きなホームランを打っても最高4点だが,ビジネスでは1000点入る可能性もある.
・プロセスを支配しているのか,プロセスに支配されているのか.
・「疲れ果てたからもう終わり」というのが意思決定において最悪の判断.
・高い基準にこだわる!
・高い基準を持っていても,それは全方面に対して持っているわけではない.それを意識することで謙虚になれる.(決してその分野で高い基準を持っていなくでも,その人がショボい訳ではない.)
・ゴールが見えているのであれば真っ直ぐ効率的に,時に直感が見えてないゴールへ誘う時はさまよう事も必要.
・大学の時に,孫正義もジェフベソスも同じような経験をしている(とんでもない天才に,学問でかなわないと思い知らされる経験をしている).
・才能と選択は違う.才能は簡単,生まれつき持っているものだから.優しさは選択,選択は難しい.
・人生はどのような選択をしてきたか.
・指が一本くらい無くなっても,自分でなにも出来ない人間になるよりはマシ.
・スタートアップの時はジェフベソスも4時間睡眠のような無理をしていた.
・だいたい2年くらいで競合が入って来る.
・信頼,つまり評判は,難しいことを何度も何度も上手にやることによって築かれる.
・失敗には二種類ある.実験の失敗と実行の失敗.
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